四面楚歌-悲運の妃-




本気で戦えば、武術では俚督の上へはいけない。



油断するつもりもなければ、油断してもいない。




交わり続ける剣に終わりが見えないと思ったのか、視界の端に映る崙宝が陛下や偉罨様達の所に戻ろうとしていた。



「お、おい!?崙宝!!」



俚督も気づき崙宝を呼ぶが、崙宝は足を止める事もなく、反応もしない。



それに俚督は深く息を吐くと、槍をおろした。



「わしらも戻るか…。」



納得いかぬ顔で言うと、崙宝の後を追う。


私もその後を急いでついていく。



陛下や偉罨様の元に戻ると、偉罨様が眉をしかめて崙宝を見た。



「陛下が見ておられるのに、そなたの域に入られては見えぬではないか。」



口ではそう崙宝を怒っているが、実際は[見えぬ域で何をしていたのだ]と言っているのだろう。



偉罨様の問いに応えぬ崙宝に、偉罨様は溜め息をつき、陛下に向き直り頭を下げる。



「陛下申し訳ありません。
影聖君は己の域で戦うが主流ゆえ。
どうかお許しを…。」


偉罨様と同時に俚督も頭を下げ、少し遅れて本人である崙宝も頭を下げた。