―――…
あの時と同じ様に、長い階段をゆっくり降りる。
先に下で待つ、崙宝と俚督。
長い階段の上には、料理や酒がそのまま運ばれ、皆が見下ろす様に座っている。
最後の階段を降り、広場の中央にたどり着く。
「久しぶりだな、冥紗。」
1番に話かけてきたのは、俚督だった。
もちろん階段の上に居る陛下達には、私達の声は聞こえない。
「やはり、偉罨様から私の事を聞いていたのだな…。」
再会の言葉ではなく、何よりも先にそれが口から出た。
生聖を鞘から抜き出し、2人に向ける。
それは敵視で出した訳ではない。
手合わせを始める様に、促す為だ。
「やはり、ゆっくり話す事も出来ないか。
ほら、よっとッ!」
俚督は背中に担がれていた、二股の槍を取り構える。
崙宝に目をやると、まだ何も言わず、ただ私を見ていた。
『崙宝…怪しまれる。』
声をかけると、私の方にゆっくりと歩き出す。
「…ならば皆に見えなくすれば良い。」
え?
近くまで来た崙宝に、声をかける暇もなかった。
崙宝の足元の影が、すごい速さで広がり、まわりを覆った。