四面楚歌-悲運の妃-




「そんな顔をして、私といるのがそんなに嫌か?」



もう誰もいない出口を見つめ、立ち尽くしていた私の耳に、吐息がかかる。


ッ!?


振り向くと同時に抱き締められる。


『へ、陛下!?』


いつのまに椅子から立ち上がり、私の所まで?


気がつかなかった…。



抱きしめられる腕が少しきつくなる。


なぜそんなに悲しそうな顔をしておられる?


嫌な訳がない。


逆に陛下といる事は嬉しい事だ。


首を横に振り言葉を否定すると、陛下は小さく息を吐いた。



「紅蕭の護衛は嫌ではないか?
皇后自らの頼みに、そなたは嫌でも断れないであろ?
私は出来れば、そなたに護衛を任せたくはなかった…。」



陛下…。



私は崔皇后様の護衛をする事を、むしろ嬉しく思っている。



それに、陛下のお世継ぎかもしれない御子と、皇后を護れる事で私がここにいる意味を成す。


陛下の役にたつ…。



陛下の腕から少し逃れる様に体を捩り、顔を上げて目線を陛下に向ける。



『何をおっしゃいます。
陛下と皇后様のお頼みなれば、私は何も嫌な事はございません。』