四面楚歌-悲運の妃-




陛下に会えたのは嬉しいけれど、なぜ黄麟殿に呼ばれたのだろう?


私が話があると言ったのは、范丞相だけだ。



「そなたが話があると壁内侍が范夷扶に伝えに来た時、私も一緒におったのだ。
しばらくそなたと話していなかった故、范夷扶に頼んでここで話をする様に頼んだ。
私がいては話が出来ぬか?」


私が不思議に思っているのを察したのか、陛下が言う。


首を横に振ると、嬉しいそうに頷き、私を椅子へと促した。


范丞相に話す事が、陛下に聞かれてまずい訳がない。


陛下と私が椅子に座り、最後に范丞相が椅子に座る。


向かい合わせに座る范丞相の顔をしっかり見て、一度深呼吸をする。



『范丞相、話とは本日の櫂家への迎親についてです。
なぜ、櫂家が七神の生家だと教えてくださらなかったのですか?
私は都・黄淋より遠く離れた地にて育ちました故、貴族の事はよく知りません。
それはお分かりでしたでしょ?』


私の問いに、范丞相はにやりと笑った。






「答えは簡単です。
琴昭儀様に、呂貴妃様の本性をお見せする為です。
見ることが出来ましたでしょ?」


范丞相はそう言うと、私の手当てされた手に視線を向ける。