楚殿に連れられ、私は自室へと帰って来た。
牡丹殿へと帰り際に楚殿が私に一言だけ言った。
「気にするな。呂貴妃様はご自分より下の者にはああいう方だ。」
慰めのつもりだったのだろう。
けれど、私は呂貴妃様に怒りをかってしまった事で落ちているのではない。
「痛みますか?琴昭儀様。」
呂貴妃様に踏みつけられた手を、手当てしながら威仔が心配そうに言う。
威仔に心配かけぬ様に、笑顔で顔を左右に振る。
范丞相に会って話をしたい。
告げ口をしようという訳ではない。
櫂家の…私の生家について聞きたい。
後は、なぜそれを教えてくださったのか。
『威仔、すぐに壁内侍を呼んでもらえないか?
范丞相にお会いしたいと頼みたいのだ。』
威仔は私の言葉を聞くと、頷きすぐに室を出ていく。
范丞相は忙しい方だ。
すぐには会えぬかもしれないが待とう。
しばらくすると、威仔が帰って来た。
壁内侍を通して、范丞相に私が話があると言った所、夕刻に会えるという事だった。
夕刻までまだ時間がある。
少し休もう。

