何事もなく迎親の行列は、黄麟殿の裏側にある天孫ノ宮(テンソンノミヤ)へと到着する。


天孫ノ宮は、恢長公子様と郢節公子様が住まう宮だ。

その中の牡丹殿が、恢長公子様の居殿。


牡丹殿前に着くと、待っていた女官が狄洙手を引き、牡丹殿の中へと入る。


私と楚殿も、続いて中へと足を踏み入れた。



恢長公子様の元へお連れするのが役目。


この後の婚礼の護衛は任されていない。



恢長公子様に挨拶をしたら、終わりだ。


その少しの間だけれど、しっかり見ておかなければ…

「櫂狄洙様、ご到着でございます。」


牡丹殿中に響き渡る様に宦官が言い放つ。



金と赤の敷物が敷かれる廊下の先には、入り口に赤堤灯が両脇に飾られた室が見えた。


その室に恢長公子様が待っておられる。


室の入口で狄洙様は頭を下げられ、私と楚殿も両脇で頭を下げる。



「よくご無事で参られた。さぁ入られよ。」



室から女人の声がし、狄洙様に続き室へ入る。



え?



室の中に居たのは、恢長公子様と…


呂貴妃様!?