人の欲とは、恐ろしいモノだ。


たくさんの人を踏み潰してまで這い上がるなど…


血の上に立つなど…



何が満足できるのだ?


私には分からない。


分かりたくもない…。



「…そうして、私は傍観者で居続けたのです。私自身と郢節…なによりも家族を守る為に。」



呉淑妃様は私達の方を振り返り、そう悲しく言った。


呂貴妃様に何もされなくても、呉淑妃様は第2の稚皇太后になどなりはしなかっただろう。


ただ傍観者でいただけではない。


知らない所で戦っていたのだ…



そう思うと、涙が流れずにはいられなかった。



呉淑妃様の為にも


2人の争いに幕を閉ざさなければいけない。



けれど…



考えても、考えても



幕を閉じるには


やはり、陛下か恢長公子様どちらかの死しかない。



私はなんの為に聖人なのだろう。


私は無力だ。



力のなさに余計に涙が溢れた。



今の私には陛下をお守りする事だけしか出来ない。


呉淑妃様を救って差し上げるすべはない…