四面楚歌-悲運の妃-



今黄宋帝の皇子は陛下を入れて3人。


現在帝位継承第1位が、呂貴妃様が生んだ恢長公子様。


第2位が呉淑妃様が生んだ郢節公子様。


呂貴妃にとっては、今陛下の次に郢節公子様が邪魔だろう。


もし、郢節公子様が帝位を狙ったらと…思われかねない。


煙がたつ前に排除するはず。


呂貴妃様も稚皇太后も、聞くからにそういう方だ。


それとも温厚な呉淑妃様の性格に、なんの心配もないと思っているから?



呉淑妃様は椅子から立ち上がると、窓際へと歩いた。

小さな窓から見える中庭を、見つめると一息ついた。


「郢節が生まれたのは、宋暦13年。稚皇太后が生んだ曹慶公子様が逝去した翌年でした。」



目線を窓から見える空へと変えた呉淑妃様は、その時を思い出すかの様に悲しく見つめた。



視線は空へと向けられたまま、口を開いた。



「郢節が…皇女であればと、何度も思いました。天界におわす天帝はなぜ、郢節を皇子として誕生させたのかと、恨みました。」



呉淑妃様?


窓の縁にそっと手を置くと、今よりもっと上の空を眺める。