「ごめんね。ビックリしたでしょ……?なんか呼吸器とか色んな問題があるみたいで、自分でも把握できてないんだけど……」

俚斗はやっぱり笑みを浮かべる。だけど顔はまだほのかに青い。


俚斗はいつも私の背中を押してくれた。

俚斗がいたからできたことがたくさんあった。

じゃあ、私は逆に俚斗になにをしてしてあげられるのだろう。

助けになりたいのに、俚斗は私に心配すらさせてはくれない。

大好きな俚斗の笑顔なはずなのに、今はすごくモヤモヤとしてしまう。


「ムリして笑わないで」

気づけばそんなことを口走っていた。

 
なにもできない自分への苛立ちと、俚斗が弱さを見せてくれないもどかしさと、両方の気持ちが入り乱れている。

私たちは一番近くにいて、お互いを必要としていることはわかっているのに、なんだかいつも俚斗が遠い。

だから怖い。


ふわりと舞う雪のように振り返ればいなくなってるんじゃないかって。

季節が移り変わって、俚斗がつけた傷跡も、きみと過ごしたこの冬も、夢のように跡形もなく消えてしまうんじゃないかって、そんな想いが胸を強く叩く。


「……ごめんね」

俚斗はそれしか言わなかった。


そのあと私たちはバスに乗って、いつもと同じ席に座ったけれど、急ブレーキをかけられても肩なんて触れ合わない距離にいた。


「じゃあね」

そして俚斗は今日も原野6線で降りていく。


私は返事をしなかった。ううん、できなかったのだ。


だって今すぐにでもこのバス停で降りてしまいたい。そのぐらい本当は心配でたまらない。でもそれじゃ、また俚斗に迷惑をかけてしまう。


私は窓から俚斗のことを見ていた。

雪の上に足が着いたところでバスはゆっくりとドアを閉める。


彼の足が進む前にその場所から遠ざかっていったのは、発進したバスに乗っている私のほうだった。