「い、いきなり何……」

「しぃー、だから、そんなに声をあげないでくださいってば」


人差し指を口元に持って行って、ヨハンは少々焦ったように眉を下げる。


ハッとして慌てて口を押さえると、彼は柔らかく笑って、私の前髪をふわりと持ち上げた。

「え……」
「静かに」

そんなことを言われても。

と、いうか。
だんだんヨハンの顔が近づいてきている気がするのは気のせいかしら。


「あ、あの…ヨハン……」
「黙って」

いや、だから….!!!


こうして焦る間にも、ヨハンの顔はどんどんと近づいて。

今ではもう、鼻先が触れそうな距離。


ドッドッドッと心臓が痛い。
顔が熱い。

もう、壊れそう。


堪え切れなくなって、ギュっと目を瞑る。


ーーコツン、


「…ぇ…」

「ほら、やっぱり。リンネ、熱ありますね?」


額にぶつかった何かにふと目を開けると、そこにはヨハンの端正な顔。

おでこがひやりと冷たくて、今やっとヨハンが額をぶつけて熱を測っているのだとわかった。


途端、かぁああ、と頬が火照る。

わ、私ってば何を勘違いして……!!!



「っ、だ、大丈夫よ!!」

「わっ、」


ぐい、と体を押しのけて、頭まで布団を被る。

バクバクとなる胸を落ち着かせるように、きつく目を閉じる。


ふと布団越しに温もりを感じて、

「おやすみ、リンネ」


彼の手が私の頭を撫でた。