お母さんには申し訳ないけれど、正直味なんてさっぱり分からなかった。


「紅蓮?ねぇ!」

「ん〜」

抱きしめる腕を必死に引き剥がそうと試みるも、ビクともしない。

寝てるのにこんなに力が入ってるなんて有り得るの?


「ぐ〜れ〜ん!!起きてったら……って、わ!」


紅蓮の腕の中で必死に体を反転させ、やっとの思いで紅蓮へと向き直った私は、


体を反転させたことによって思いのほか近づきすぎてしまった紅蓮との距離に驚きのあまり思いっきり後ろへと仰け反った。


それを阻止するようにすかさず自分の胸へと私を引き寄せた紅蓮は、さらに私の首元に顔を埋めた。

「うるせぇ、黙ってろ」

「っ!!」


寝起きの少し掠れた声で、低く気だるげに呟かれたそれは、やけに私の鼓膜を震わせる。


「ぐ、紅蓮……」


負けじと紅蓮の胸を叩けば、そんな私に負けたらしい紅蓮がゆっくりと腕の力を緩めて、相変わらずの至近距離で眉間にシワを寄せる。


「ったく、せっかく気持ちよく寝てたのに」

「だ、だって……そろそろ朝ごはんだよ」

「飯くらい勝手に食ってこいよ」

「だ、だって紅蓮がいつまでも抱きしめてるから!」


それに、私がいないと紅蓮、寝れなくなるんじゃないの?……なに?昨日のアレは嘘か?嘘なのか?