それ以外の夢に出てくるのはあの日。


始祖の転生が、そう呼ばれるきっかけとなった日。


「紅、るうちゃん……」
 

知っても、こうして傍にいてくれるかな?
 

小路の始祖たちが犯した禁忌を知っても、こうして傍で安心して眠ってくれるだろうか。
 

無垢の魂たち。
 

今の真紅の両手は小さい。


小路に入ったばかりの頃は、こぼれ落ちしまうことは止められず、ただ焦るばかりだった。
 

でも、今は……真紅の両手は、片手で紅姫を抱きしめて、もう片手は大すきな手に繋がれていればいい。


そうやって、少しずつ護れるものが増えて行けば。
 

今やれることは、総てじゃなくてもいい。
 

今日よりも明日、一歩も進んでいなくても、立ち止まっていても、涙まみれでも。
 

今ある大事なものは、なくさないように。
 

抱きしめた手は、繋いだ手は、はなさないようにしたい。
 

そう思うようになっていた。


始祖たちの禁忌を知って、更に強く。