黎の中に流れる真紅の、退鬼師としての血は、鬼人であり吸血鬼の、『混ざりもの』の黎の、鬼としての血だけを退鬼した。


黎が混血だったことが幸いしたのだ。


鬼人は人間と鬼、両方の血を引いている。わずかでも、黎には『人間としての血』が流れていた。


それによって生きることが出来た。


黎が完全『鬼』でしかなかったら、黒藤が「変わった退鬼の方法だ」と笑ったこれは叶っていない。
 

黎と生きること。海雨を助けること。真紅は、それを選んだ。


「真紅ちゃん、そろそろ時間よー?」


「あっ、はーい」
 

真紅は新しい場所にいる。
 

違和感の全くない、だが、『真紅』にとっては新しい居場所。


「行ってきまーす!」
 

真紅が生きる場所は、真紅が決めた。