「真紅ちゃん、よくこんなとこ気づいたね。なんかちょっと暗いし、私近づいたこともなかったよ」
庭園の隅の小さな木立(こだち)。
樹の色がそのままの百葉箱の社。
それを前にして、百合緋は物珍し気に眺めている。
「色んな香りが、ここから漂ってくるんだ。最初は優しい感じだったんだけど……」
真紅がそっと、社に手をかざす。
白桜が言うに、地神が祀られている社でありながら、その外観は学校によくある気温観測用の百葉箱と変わらない。
それにも意味があるのだろうか。
「……ねえ真紅ちゃん、ちょっと訊いてもいいかな?」
ふと百合緋が、真剣に社を見つめる真紅に言って来た。
「うん?」
真紅が手を下ろして応じると、百合緋は何度も視線を彷徨(さまよ)わせてから口を開いた。



