「……恨んでるか?」


「……誰を?」


「俺」


「……兄貴から言う様な話じゃないだろ。言うなら、母さんから聞くべきだ。だから、今日のことでいいと思ってる」
 

架は、真っ直ぐ前を見ながら言う。
 

強くなったな、兄は思う。


「――俺は真紅ちゃんにつくって決めた。だから、せっかく叶ったんだから、逃がさないでよ」


「当然」
 

逃がす気なんて、さらさらない。






 
兄と道を分かれて、架はしばらくその背を見ていた。


「紅緒様が、小路が先代なんだ。その辺り、よくわかってよ」
 

鬼を伴侶とした陰陽師は、小路流の当主だった。