庵と言っても三人が暮らせる広さはある。 敷地は竹垣で囲われていて、砂利と芝生で作られた庭。母家が一つ。 黎は初めて玄関へ足を踏み入れた。 「まだ縁側の方があったかいね」 言って、真紅は庭に面した縁側に黎を呼んで茶器とお菓子を置いた。 母、紅亜は料理上手で、お菓子も得意だ。 少し時間が空くとお菓子も教えてもらっている。 今まで一緒にいられなかった時間を、少しでも取り戻したくて。