「逆を言えば三人とも、馨さんの言うことだけは聞いていた。

今は誠さんが大分落ち着いたけど、常識人だったから、馨さん」


「……なんか、大変さがよくわかるよ……」


「家の人たちは馨さんのことは、弥生さんの同級生程度でしか知らない」


「じゃあ……本当に母さんやとうさ――、…………」
 

恐らく誠のことをそう呼びかけて、架は声を詰まらせた。


「架。誠さんは、馨さんの分もお前を育てたかったんだ。嫌じゃなければ、そう呼んでやれ」


「………うん」
 

架は俯き気味に肯いた。


「……母さんも父さんも、美愛さんも……俺の所為で複雑にしちゃったんだね……」


「それは違う」
 

声にしたのは、真紅だった。