鍵のかかる場所はすべて施錠をした。
一応、任されることによる責任感はあったからだ。
「彩矢香の部屋にある手鏡を使おう」
「ぉ、おぅ」
時間が迫ると、さすがの康文も顔が強張っている。
「本当に終わらせられるんだな?」
「あぁ!」
時刻は2時半を過ぎていた。
気分を落ち着かせるためか、今日初めて会話の先手を打つ康文。
「タツミは信用されてるんだな。こんな豪邸を預けるなんて」
「まぁな」
「ふたり、ヨリ戻したのか?」
「……いや、まだ明確には。でも、僕たちはそうなると思う」
「そっか……」
「なんだよ、いきなり」
ここで彼は、とんでもないことを口にした。
「俺さ、サヤに告白しようと思ってる」
「は゛⁉ 何言ってんの?」
「気付いたんだよ、昼間。必死で俺のこと守ろうとしてくれて、俺もサヤを守りたいと素直に思った。今日が終わったら告白する。フラれてもいいんだ……友達としても、守ることはできるから」
「ふ…」
ざけんな。彩矢香は僕のモノだ。何人たりとも指一本触れさせない。
「ライバルだな、俺たち。でも負けない自信がある」
「っ゛……」
どこから来るんだ、その自信は。走るしか能がないくせに。
しかし、正体がわからないから、余計に脅威を感じる。
独走だと思っていた僕にあっという間に追いついて、彩矢香とゴールテープを切るのではないか、と。
「僕も絶対に負けない。自信がある!」
決めた。
コイツを殺す。
厳密に言えば、呪いの化身が。
犯罪者に成り下がるつもりなど無いからね。



