ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】




泣き疲れて、床にぐったりと倒れる彩矢香を外の椅子まで運んだ。

声がかすれていたから、今度は自発的に自動販売機へと走る。

遠くに見える病院の入口には、すでに大勢の記者や報道のカメラが待ち構えていた。

「ヤベぇな……」

この状況、あまりにも突然すぎる。

もしや、復讐の騎士団が関わっているのか。

だとしたら、彩矢香に対して異常な執着だ。

聖矢の誘拐に、父親の不慮の…。
「いやいや!」

今、危うく“死”をつけるところだった。

「これ、ほら。ハチミツは喉にいいから」

「……ぁありがとぅ」

それに、彼女はレモンティーが好きだ。

ペットボトルのフタを開けると、甘い香りが漂った。

残念ながら、僕らふたりだけのそういう時間は、一時休止になるだろう。

「なぁ、彩矢香。今日は母親とずっとここに居たら?」

「ぇ。でも……」

康文なんて、天秤にかけるほどではない。

「僕が今夜、彩矢香の家を守るよ。もちろん、聖矢も康文もね」

「……ホント?」

「あぁ。たまには頼ってくれ」

「たっちゃん……あり゛がとう」

「いいんだ」

「でも……」

「でも?」

「頼りないなんて、一度も思ったことないよ」

「彩矢香……」

ロマンスは意外なところに転がっているもの。

人目もはばからず抱きしめ合う僕たちに、一足早く訪れた聖なる夜の甘いメロディーが流れていた。

恋愛小説じみているが、早とちりはよろしくない。

僕はただ、院内に流れる有線のチャンネルのことを言っている。