ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】




舌打ちが止まらない。どうして僕がパシリみたいなことを。

それもこれも全部、康文が意固地なせいだ。

「意固地って……ちょっとかわいいな」

ひとりつぶやき笑っていると、一生ミスキャンパスにはなれない女たちに冷たい目で見られる。

やっぱり、アイツのせいだ。

「こうしてやるッ!」

ひとつだけ冷たい飲み物を買って戻ると、僕は全部を地面にぶちまけた。

「うそ……」

康文が膝をついて泣き、それを彩矢香が抱きしめて慰める。彼と同じように涙を流して。

「…………」

他の男を抱きしめる姿なんて、もう二度と見たくない光景だったのに……。

説得が上手くいったようだが、ほとほと解せない。

ああいう風に泣くのは、あんなにきつく抱きしめるのは、他人ならば愛する人にのみでいいはず。

そう、この僕にだけで。

「どうした?」

「……たっち゛ゃん。ヤスがわかってくれたの! 今夜、終わらせてくれ゛るって」

「あぁ、そう」

感動的な一場面だが、写真に撮る気はさらさら無い。

所詮はコイツも恐れをなしただけ。

本当は死にたくなくて、これまで膝を震わせていたんだ。

だから、いま立っていられないのだろう。

「で、どうする? 彩矢香の家に集まるか」

今夜は早く帰る。彼女が母親とこの約束をしていたのを忘れていなかった。

「そ、そうだね! うちに来て。いい?」

「……う゛ん、わかったよ」

午後の講義のため、康文は校舎に入っていった。

これでやっと、僕らのランチタイムだ。

時間も時間。駐車場が空いている店はなかなかなくて、3軒目でやっと車を停められた。

「ちょっと待って。お母様から電話だ」

ドアを開けた直後、携帯を手に取る彩矢香。

吹きつける風が冷たすぎて、互いにドアを閉めた。

『もし…』

『大変よ! 今すぐお父様の病院に来てっ!』