僕らは場所を変えた。木の周りを囲むように設置された金属のベンチに。
「あ゛ぁーさびぃー」
僕は途中までこれしか言っていない。
一生懸命に話をするのは彩矢香だった。
誰にでも手を差し伸べる彼女は、キリストの生まれ変わりを産みそうだ。
「いい加減にしてよ! 鏡を使えば助かるんだってば!」
「…………」
「そんなに死にたいの⁈ ねぇ゛、お願いだから……」
どんな状況や理由であれ、彩矢香を悲しませるヤツには黙っていられない。
「どうせ、あれだろ? ずっと思ってたんだけど、余裕ぶっこいてんだろ?」
「余裕? どういう意味?」
「大貫は許してくれるってさ。なんてったって、お前ら幼なじみだもんな!」
「は゛⁉」
康文はこの響きに過剰な反応を示すと知っていた。
彩矢香がダメなら、こういう手しかない。
「勘違いすんなよ。お前に呪いをかけているのは伊達磨理子で、お前を助けるのは僕たちだ。大貫は一切関係ない!」
「っ……」
「だから、いつまでもいい子ぶってないで、言うこと聞けよ゛!」
「…………」
僕の言葉に圧倒されたのか、康文は口を開かなくなった。
しかし、理解したわけでもないご様子。
「タツミ……お前は俺のことなんて一生わからないだろうな。行くよ」
「いやいや。アホぬかすな! お前が僕を理解しろ!」
「たっちゃん!!」
去ろうとする康文を追いかけようとしたが、彩矢香に強い力で止められた。
「な゛んでもっと優しくできないの⁈ 本当にヤスのことを心から考えてる!? もう私が話すから、あっち行ってて!」
「ぇ……」
「寒いんでしょ? これであったかい飲み物買ってきてくれる? 3人分」



