凶悪犯罪を取り上げる司会者が笑ってしまうほどのエピソード。
思考が混乱する。凄惨な形で死体を遺棄する表の顔と、片やいたいけな少女を助ける裏の顔。
そもそもあの女を知らない僕には、どちらが裏で表かもわからない。
彩矢香は音声だけでこの事実を把握していたが、人を判断するには十分だったようだ。
「根は悪い人じゃないんだよ、きっと。話せばわかってくれるのかも……」
だが、そこには大きな過ちがある。赦されるべきは伊達磨理子なのだ。
「それよりさ、さっきファミレスの前通らなかった?」
「え?」
「えって……昼、食べるんでしょ?」
好きな女のため息ほど、男を焦らせるものはない。
「何言ってんの! ヤスの所に行くのよ!」
「……ぁ、そぅ」
すっかり忘れていた。僕らの前に、あいつが鬼だということを。
20分ほどで康文が通う大学に着き、初めて他人のキャンパスを歩いた。
「食堂にいるって」
彩矢香が連絡を取り、久しぶりにあいつの顔を見る。
なんて、ほんの数日だ。あまりにこの数十時間が濃すぎた。
「よう。大学生やってんな!」
「お前もだろ!」
「もう単位取ってるしー。優秀だから、ボクちん」
「はいはい」
男同士のノリに彩矢香は参戦せず、
「ヤス! わかってるの⁉ 今日だよ、今日の夜なんだよ……」
すでに涙ぐんでいた。
「もう誰も死ぬトコ見たくないの゛……」
周りの生徒の視線を一身に浴びている。
構図は、女を泣かせるサイテーな彼氏だ。
「ぉ、おいサヤ。こんなトコで勘弁してよ……」



