そんなこともあってか、玄の遺体は余計に哀れだった。
身体はズタズタで、時計から財布の中身や、金目の物はすべて奪われているらしい。
顔に傷ひとつなくキレイなのが唯一の救いだ。
「ニュースでは怨恨の線が濃いと言ってるけど、実際は物盗りの犯行かもしれない」
「復讐の騎士団じゃないんですか?」
「一応もっとも有力な線としてるけど、どうかな……」
あいつらは、新世界を作り上げるという大義があって動いている。
「そういう奴らには犯罪にも一貫性があってね、金品を盗むなど考えられないんだよ」
謎に包まれた玄の殺人。
総評すると、どうでもよかった。いやむしろ、よくぞやってくれた!と犯人を心の中で称賛する僕がいた。
「戻ろうか」
斎藤の声かけで、僕らは地下1階から合同捜査本部のある2階に戻る。
「実は、もうひとりの被害者についても訊きたいんだ」
そこで、浜田が1枚の写真を見せてきた。
東京じゃ考えられない大草原。もっと言えば、日本とは思えない地平線が広がっている。
「ここは?」
「山口基弘くんが遺体で見つかった現場だよ」
「「え⁉」」
とあるサファリパーク内、出勤してきた従業員が第一発見者だった。
木に吊るされていた山口は、その肩から下がなく、顔は人間とは思えないぐらい歪んでいたらしい。
「遺体をまだ解剖してないからあれだけど、多分生きたまま喰われたんだろう」
「喰われた?」
木があった場所は猛獣エリア。すなわち、そこの住人に。
「むごい……」
「…………」
見せられないという浜田の配慮があっても、聞くだけで十分に惨たらしかった。
「一匹を殺処分して調べるそうだ。その…」
「もういいです! わかりました」



