ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】




浜田はまったく余計なことをしてくれたものだ。

これ以上に気まずいエレベーターの中があるだろうか。

沈黙の均衡を開いたのは、玄の父親だった。

「君らは息子とどこで?」

「ぁ、中学です」

「開桜か」

「はい」

「私は卒業式の日しか顔を出さなかったな。あそこに入学するのは当然だと思っていたから」

この人、うちの親父と同じ匂いがする。鼻ではない嗅覚がそう感じた。

「さ、さ。こちらです」

この先に芸者でも待っているのかというような誘導の後、ある扉の前で止まる。

「キミらは一旦ここで待ってて」

「だから、構わんと言ったろ」

「いや、でも……」

最期の対面になるというのに、ネクタイを締め直すわけでも、ハンカチを用意することもなく、父親自身がドアを開けた。

中央だけが照らされ、周囲は灯台の真下のように暗い。

白いシーツと覆い。顔を隠す布。

「…………」

これが安置室か。ゾクゾクする。

父親は早々に、右手の指先だけで布をめくった。

「うむ。息子で間違いない。通夜なんかの段取りは妻に任せてあるから、連絡が来るまでよろしく頼むな」

「承知致しました」

「え……」

ものの10秒。捜査員たちに話をした時間より格段に短い対面だった。

浜田と斎藤は唖然とし、見送りも忘れてしまう。

「よっぽど忙しいのかな……」

「俺たちがいる手前、毅然と振る舞うしかなかったんだろう」

ふたりはそれなりにフォローを入れているが、僕にはどれも響かなかった。

単に、冷たい人間なだけ。今の息子といい勝負。

やはり、あの人は親父に似ている。