『玄が、死んだ⁉』
たて続けに起きた聖矢の災難と玄の悲劇。
今の僕を上手に表現する言葉がないから、新しく作ろう。
それは、踏んだり願ったりかなったり、だ。
『真夜中に殺害されたらしい。キミらは何時まで一緒にいたんだ?』
僕は声が浮つかないよう、丁寧に説明する。
『夜の9時過ぎぐらいにキミは倒れて、起きたのは朝。証明するのは一緒に寝ていた彩矢香さんだね?』
『はい』
『……なるほど』
『もしかして、疑ってます?』
『そんなことはないよ! 形式的な質問だから。彼女に代わってくれる?』
僕の手を離れた携帯。彩矢香は背を向けて歩き、シャンデリアの下をグルグル回りながら話している。
それが犬のように見えて、不謹慎にも笑ってしまう僕。
通話を切るのを見て、とっさに歯で舌を噛んだ。
「なんか疑われてる感じしたよね?」
ニヤつきは収まって見えているだろうか。
「そう? 夜まで一緒にいたんだからしょうがないよ」
どうやら、大丈夫なようだ。
「あの人について署で詳しく話を訊けないかって。どうする? 行く? 遺体も安置されてるみたい」
「……行こう」
単純に見たかった。アイツの死に顔が。
彩矢香も似た感情を持っているはずだ。玄のことを“あの人”と呼んでいたから。
「出かけるの?」
母親は不安を丸出しにして娘に問う。
「私には聞こえないようにコソコソして、最近あなたたち様子がおかしいわよ」
大切な一人息子は自殺未遂をするし、最愛の夫は入院している。彩矢香に傍に居てほしいと思うのは、当たり前の心理だ。
「夜には絶対に帰ってくるから。ね、いいでしょ?」
「……えぇ。お願いね」



