——ドンドンッドンッドンッ!
「聖矢⁈ おい、どうした⁉」
マズい予感がする。
彩矢香と母親も声を掛けたが、一切反応がない。
「ちょ、離れて!」
——ダンッ!!
僕は扉を蹴った。何度も、何度も。
少しづつ鍵の部分が曲がり、渾身の一撃で、ドアが勢いよく開いた。
「せ、聖矢―!」
小さな体が床に横たわっていた。
右手でカッターナイフを持ち、左手首からは血が離れてゆく。
「…………」
最悪の展開。
母親はオドオドしながらタオルで止血をし、彩矢香が頬を叩く。
「しっかりして! 聖矢っ!」
血を見たことで気を失ってしまったのか。呼びかけに応じるまで数分かかった。
さほど出血量は多くなく、応急処置をして、あの医者に電話をかける。
「すみません。僕が追いつめたせいで……」
何もできず、部屋の隅で突っ立ったまま言う僕に、母親は携帯を手で押さえながら、
「お願い。下へ行ってて!」
と叱責した。
それからは覚えていない。
よく転げ落ちずに下まで行けたものだ。母親に声を掛けられた時、自分が椅子に座っていることにやっと気がついた。
「ごめんなさいね。さっきは大声を出して」
「……ぇ、あ! 聖矢は⁈」
「大丈夫。傷が浅かったから、命に別状はないわ。先生も来てくれたし」
「よかった……ホントに、よ゛かった」
「タツミくんならって、私も思っていたわ。だからあなただけの責任じゃない。でも……」
「でも?」
「あの子にはまた時間が必要みたい……」
暗黙の“面会謝絶”。
幸先の悪いスタートだ。



