さて、ひとつずつ頭痛のタネを取り除こう。
僕と彩矢香は寝室から出て、廊下の先にある聖矢の部屋に向かおうとした。
「お母様⁉」
階段の手すりにもたれかかる母親を、彼女が見つけて真っ先に駆け寄る。
すぐ脇には、お盆に乗った朝食が置かれていた。
「お母様!」
「……ァ」
身体を激しく揺らすと、やっと反応があった。
「部屋に入れてもらえなくてね。何も食べたくないし誰とも話したくないっ
て……ッ゛」
そう嘆き、彩矢香にしがみついて泣く。
「あの子、良くなり゛かけてたのに゛……」
「お母様……」
「…………」
真夜中、家の中を歩く足音を聞いたらしい。
聖矢だと思い、1階の寝室から出て声を掛けようとしたが、逃げられるのが恐くて踏みとどまった。
「もう息子の顔を゛見れないのかしら、わ゛たし……」
母親は僕を必要としていた。その思いに応えるのは今しかないと、聖矢の部屋のドアを叩く。
——コンッ、コンッ。
「たっちゃん⁉」
「タツミくん⁈」
「シー! 僕に任せて」
ふたりとも止めなかった。やはり、期待しているんだ。
「聖矢、聞こえる? 僕だよ」
——……。
「出てきてくれないか? みんな心配してる」
——……。
今回ばかりは、一筋縄じゃいかなそう。
「もう何も話さなくていい。怖がらなく…」
——ドンッ!
扉が一瞬だけ揺れた。硬いなにかを投げつけたようだ。
「う゛る゛さーーーい゛ぃ!! 来る゛なっ゛!」
「……僕に話した自分のことを責めてるのか? なぁ、聖矢」
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れっ! アあ゛嗚呼アァ゛あ゛ああ゛ーーーー……ッう゛ぅ」
さも狂ったようなうめき声が、痛みで悶絶しているような
ディテールに。



