雲の上で寝そべっているような心地よさだった。
意識が醒め、瞼を上げる。目の前には、真っ白くて大きな雲が広がっていた。
そう。雲に挟まれるなど、違和感以外のなにものでもない。
胸の辺りに重みがあって目をやると、
「彩矢香……」
彼女が眠っていた。
首だけで辺りを見回す。
僕の部屋とは比べ物にならない広さで、彩矢香の部屋とはまったく違う内装。
カーテンの裾からは、まばゆい光が漏れていた。
「彩矢香? さ…」
「ンンーー……ッハ!」
まるで幽霊でも見たように、僕の顔を見る。
「たっちゃん! よかった……」
「ここは?」
「お父様の寝室」
「え⁉」
「記憶ないの? 昨日、外で倒れて……過労による貧血だろうって、先生が」
僕を運んでくれたのは、そのお父様らしい。
結婚前の娘の部屋には入れられないから、と。
「で、お父さんは⁈」
まさか天下の大社長を、僕がソファーに寝かせたのか。
「たっちゃんを抱えるのに無理したみたいで、病院に……」
なんたる結果。ソファーよりもヒドい。
「マジ……」
「最近体調悪いみたいだし、弟のこともあったから。気にしないで! 念のための検査入院だから」
「……そぅ」
「ちょっとだけ寝るつもりだったのに、朝になっちゃった」
——ジジジジジジジジジジッ。
「っ……」
部屋全体が明るくなり、ふたりして眉間にシワを寄せる。
太陽のせいか。それとも、気がなっていることがありすぎるからか、耳の後ろに痛みが走った。



