「フンッ、これでわかったやろ。ほな、さいなら~」
人をムカつかせる多彩な手のひらだ。
僕はすっかり意気消沈し、車に背を向けて歩きだす。
頭を渦巻くのは、玄を殺すための方法。
それに、信じていた。きっと彩矢香が迎えに来ると。
「たっちゃん!!」
希望の声が聴こえ、とっさに振り向く。
「彩矢香……」
そう、そう、そう。僕らには、誰にも裂けない絆がある。
「一緒に来て! お願い……」
そんなに瞳を潤ませなくてもわかっているさ。
「聖矢が大変なの!!」
「……へ⁉」
携帯を渡された。運転席のドアのポケットに忘れてしまったらしい。
「この留守電聞いて!」
僕は戸惑いながら、耳にあてる。
《『どこにいるの⁉ すぐ帰ってきて! 聖矢が危険なの。タツミ君を連れて今すぐ!』》
「行こう!」
僕の手を引く彩矢香。助手席の玄は不機嫌そうな顔で言う。
「ご指名ならしゃーないわ」
アスファルトが乾いているから、今度は止めなかった。
聖矢の身に何が起こったのか。
一応、弟みたいなやつだから心配だ。
約40分。
門扉が開く時間が倍遅く感じる苛立ち。
「あの車、先生の……」
「先生?」
「聖矢のこと診てくれてるかかりつけの」
玄関の前に停まっているその車の後ろに止め、エンジンも切らぬままで飛びだす姉。
「お母様! 聖矢は⁉」
大きなテーブルの椅子には父親と母親、背もたれに白衣を掛けた初見の男も。
「遅かったじゃない……」
3人は、重苦しい雰囲気でお茶を飲んでいた。



