「言うことを聞いてくれたら、私たちは絶対にアナタを殺さないわ」
公衆の面前だからか、男どもは覆面をしていない。
初めて見たその素顔は、とても殺人に手を染めるとは思えないほどに普通だった。
そして、沙奈の家で見た写真の男と似ても似つかない。
「わわわかった! 撃たないでくれ」
銃を見てすっかり怯えきった山口とは対照的に、無神経な正義を振りかざすバカ。
「お前ら誰やねん!」
玄の位置からは銃が見えなかったのか、女に近づいたその瞬間。
——カチ。
その眉間へ、銃口が突きつけられた。
さすがにこれは、フードコートにいる他の客たちの目を引く。
だが、誰も逃げようとしない。
何故ならば、日本は平和ボケした国だから。
「っっ゛⁈ ど、どうせニセモンやろ」
「どうかしら? 答えがわかるときは、あなたが死ぬ時よ。試してみる?」
「くっ……」
——ザワザワ
《「ぇなに、撮影?」
「カメラどこ」「あれ、本物じゃないよね?」》
ザワザワ——
「玄一郎太……変わった名前よね。あなたは関係ないはずよ。引っこんでて」
僕は願った。繰り返し、何度も何度も。
「撃て、撃て、撃て! 撃て! 撃て、撃て! 撃て!」
「……たっ、ちゃん?」
しまった。無意識につぶやいていたようだ。
つい口に出てしまうぐらいの願いも、あえなく散る。
両手を上げ、静かに一歩。また、一歩。後ろへ下がる玄。
「これでええんか?」
「どうもありがとう」
緊迫感がほんのり緩和したその時、まるで僕の舌打ちが合図だったかのように、
「銃を捨てろっ!!」
周囲に響く怒号。



