「俺と結婚するなら誰も傷つかずに済む。そう言ったんだな?」
「……ぅん」
許せない。
「ア゛イ゛ツ゛……」
似てもいない。今度は、正真正銘の殺意が湧く。
僕は部屋を出て、玄を捜した。
「あら。そんな恐い顔してどうしたの?」
「お母さん……あの、さっき来たヤツは?」
「庭にいるんじゃないかしら」
急いで靴を履き、庭に出る。
「玄!」
こいつにはもう、あだ名など必要ない。
「おぉ……その顔は、聞いたんやな」
余裕の笑みを浮かべて答えるヤツに、僕は突進した。
「てめ゛ぇ゛――!」
大事なことを忘れるほど無我夢中で。
「ぐはッ!」
刹那的な天変地異。
——……。
気付けば、一番星を地面と同じ目線で見ていた。
「受け身ぐらい取れや」
そう、こいつは柔道の黒帯だ。
「ぬ゛っつッ……」
内臓が揺れる中でヤツは、僕の両腕を足で押さえ、馬乗りになる。
なんとも皮肉な結果だ。
「どうせお前も、財産目当てなんやろ?」
「ッく……」
「知らんやろな。ホンマは、オレもずーっとサヤが好きやってん」
「ぐぬぬ゛っ!」
「あんなええ女、そこらにはおらんやろ。んでもって、大金持ちや!」
「こッ゛……殺してやる゛!!」
「ハハハッ。この状況でよく言えるな」
「ねぇ! 何してるの⁉」
いつの間にか、玄関の前に彩矢香がいた。
こんな姿を見られて、僕のプライドはズタボロだ。



