やはり、玄と彩矢香が二人っきりなのは気が気でない。
たしかに僕の所有物ではないけれど、思い合っている自信がある。
だから、邪魔をする権利はあるはずだ。
——ガチャ。
「やっぱ…」
——……。
一瞬、心臓が止まる。あまりの衝撃に。
ふたりは抱き合っていた。
それも、玄の背中に彩矢香の手がしっかり回っている。
「勝手に入ってくんなや! ええトコやのに」
僕に気付き、ふたりは離れた。よく見ると、彩矢香が泣いている。
その涙は、愛しさゆえか、悲しさ故か……。
「グスッ、たっちゃん……ごめん」
謝られると余計に辛い、裏切りの抱擁。
「ど、どういうこと?」
僕の素朴な疑問に、玄はさらなる衝撃で返す。
「オレら今、婚約した」
「は⁈」
ありえない展開に、僕は頬を緩ませる。
ドッキリの看板を持った誰かの登場を、いまか今かと待った。
しかし。
「そやんな? サヤ」
「…………」
彼女は肯定しない。でも、否定もしない。
「なんなら、ここで誓いのキスでもしたろか?」
できるわけがない。騙すにしたって、やりすぎだから。
「な゛⁉」
僕の中で、何かが崩れ去る音がした。
ふたりのキスを目の当たりにしたことで。
「彩矢香……」
顔を背けず、玄の口唇をすんなり受け入れている。
ご丁寧に、瞼まで閉じて。
「これで証明になったやろ。今からサヤは、オレの所有物や」



