「コーヒーにする? それとも紅茶がいい?」
部屋に入るとすぐ、彩矢香はウォークインクローゼットにコートをしまいながら言った。
「コーヒーがいいかな」
「わかった」
女の子の部屋で独りになると、妙にソワソワするのは僕だけだろうか。
フリル付きのベッドカバーや、フカフカのクッション。
それらの柔らかい感触を肥やしに、頭の中で妄想を膨らませる。
こういう行為が僕だけだとしたら、自らを変態と認めよう。
「シロップ持ってくるの忘れちゃった! 取ってくるね」
「いや、大丈夫だよ! ブラックで」
「そう?」
なんてことない会話でも、まるで同棲でもしているような幸福感。そして、優越感。
「そういえば、ゲン太って彩矢香の家知ってたっけ?」
今、この家に向かっている玄。
まだ僕の中で完全に疑いは晴れず、こんなことでも気にかかる。
「憶えてないの? 中3の時、ここで誕生パーティーしたじゃない! みんなでまだ小さい弟と庭で遊んだでしょ? あれは楽しかったな~」
「……あぁ!」
すっかり忘れていた。そういえばあのとき、玄もいた。
「学校でも何日間か言ってたよな!」
「うん。それぐらい楽しかったんだもん。ぁ写真あるよ、見る?」
「いいねー!」
思い出話に花が咲き、そろそろ散ろうかという頃、門扉の呼び鈴を鳴らす何者か。
「来た!」
彩矢香は部屋を飛び出し、
「私が出るから大丈夫!」
と、下に叫んだ。



