ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】




「このことは誰にも言わないで」

車に戻った彩矢香は、伏し目がちにそう言った。

「わかってる。ふたりだけの秘密だ」

彼女の手を握り、墓場まで持っていくと誓う。

「たっ゛ちゃん……」

初めて、僕の胸に飛びこんできた。

父親の裏切り、大貫と自分が血を分けた姉妹という真実。

常に気丈な彩矢香でも、これは耐え難かったのだろう。

僕は黙って彼女の髪を撫でて、背中に手を添えた。

白昼堂々の愛情表現に、外を歩く人の視線は集中。

そんなことはお構いなしで、きつく抱きしめ合う。

この状態は、完全に“詰み”だ。

どれほど時間が流れただろうか。

「もぅ大丈夫……ありがとう」

僕の胸から離れ、ハンドルの前に居直った。

「帰ろっか」

「……なぁ、せっかくだから色々寄って行かない?」

もちろん、そんなことをしている場合じゃないのはわかっている。

呪いはまだ終わっていないし、僕らの周りの不穏な動きの正体も判明していない。

「帰りがけに熱海もあるしさ、それに……お腹へった」

「クスッ。そうね」

このまま帰ってしまえば、父親を軽蔑し、父子関係が悪化するかもしれない。

それだけはどうしても避けたかった。

かつ、これまでのキズを癒して、頭を刷新する時間が欲しい。

「行こっか!」

「イェーーイ!」

とにかくもう、重い空気が軽くなるように最善を尽くす。

キャラを棄ててハシャいでみたり、柄にもなくモノマネをしてみたり。

初めは、どうしたの?ばかりだった彩矢香も、少しずつ笑ってくれるようになった。

海の幸満載の美味しい丼を食べ、名湯で魂の抜けるような快感を得る。

心も身体もフラットになった状態で、大貫の母親が放ったあの言葉が脳裏に甦った。