ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】




笑えない冗談だった。

しかし、少しずつ明かされてゆく過去は、とても作り物とは思えない。

「昔、会員制のクラブで働いていたことがあってね……」

その店のVIP客が宝泉賢矢、彩矢香の父親だった。

いつしか彼の愛人になり、人知れず逢瀬を重ねるようになる。

妻とは長く子供をもうけることができず、世継ぎが欲しいと常々言っていた。

もし自分が妊娠すれば、彼と家庭を築けるかもしれない。

そんな淡い期待を持っていたが、実際に妊娠が発覚すると、関係は一変した。

同時に、妻も子を身ごもったのだ。

「手切れ金として200万を渡されたわ。この金で堕ろしてくれって。捨てられたの、私は……」

それでも、彼のことを愛していた。

悩んだ末に、ひとりで産んで育てることを決める。

生まれてからは、娘の成長だけが自分の生きがいになった。

だが、あるとき知人から聞いた話によって、復讐心が芽生えてしまう。

「あなたが開桜中学を受験すると聞いたの。だから私は、サチもそこに行かせると決めた」

娘は超のつく天才で、難なく合格。

そして、賢矢とその妻の間に授かった彩矢香と、奇跡的に同じクラス。

教室で彼と目が合った瞬間、この世の終わりを彷彿とさせる表情をしていた。

そのときの血が沸き立つような興奮を、今でも覚えているらしい。

しかし、反動は大きかった。

人知れずの復讐を果たした後、からっぽになった心。

それを埋めるために、金や男や酒に溺れてしまった。

「自分でも認める。私は愚かで哀れな人間よ。だから、娘にも捨てられたのッ゛……」

すべてを曝した母親は、虚脱にまみれて泣きわめく。

これ以上の収穫は無いと、僕は彩矢香を連れて家を出た。