ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】




言葉が出ない。まさしく、“天才”に相応しい最期だ。

母親は、遺骨の下に置いていた白い封筒を、そっと僕に差しだす。

「これは?」

「遺書です。あの娘の」

「…………」

僕らに読む資格があるのだろうか。

いいや。本当は恐い。

この中に自分たちの名前があるような気がして躊躇う。

すると彩矢香は、僕の手から取り、読みはじめた。

それも、忖度することなく声に出して。

「生きるのに疲れました。生まれてきた事を悔やみました。だから死にます。お母さん、ごめんなさい。先逝く娘をどうかお許し下さい」

「ぅう゛っ、ぅ゛う゛……」

むせび泣く母親。

大量にある空のお酒は、こうしてすべてが涙へと濾過したのだろう。

「…………」

僕は迷っていた。

大貫が人生に悲観した一因が、自分たちにもあるかもしれないと正直に打ち明ければ、きっと母親の悲しみは半減するだろう。

だが、これも恐れる。

過去に傷がつけば未来まで響く世の中で、僕らはこれからも生きていかなければならない。

大貫には悪いが、保身のために封印するしかないのだ。

「彩矢香さん……やっぱりあなたは、サチの思いを代弁できる人ね」

「ん⁉」

突然、母親は妙なことを言いだす。

食いついたのはもちろん、僕よりも彼女だった。

「どういう意味ですか?」

「…………」

これまで涙を拭っていたハンカチで、今度は口を覆う。

いかにも、何かを隠している素振りだ。

「もしかして、私のことを知っているのと関係が?」

ぐしゃぐしゃだった顔が、彩矢香の問いかけで一気に強張る。

「あなたがここに来るのは運命としか思えない。サチにも言ったことのない事実を話すことは、私の贖罪になるのかしら……」

そして、ついに重い口を開いた。

「サチの父親は……宝泉賢矢、あなたのお父さんよ。あなたとサチは、腹違いの姉妹なの」

「え゛⁉」
「ッ⁈」