どうにか座る場所を確保し、久しぶりに正座をした。
彩矢香は居ても立ってもいられないような表情を浮かべながら、部屋の隅から隅を見渡している。
僕が、茶渋の浮いた湯飲みのお茶に手をつけるべきか悩んでいると、母親は濁りのない告白をした。
「あの娘が死んだのは私のせいなのよ」
「ぇ……」
それは、大貫が高校2年だったときの冬。
「言ってしまったの。あんたなんか産むんじゃなかったって」
「…………」
ここに入った瞬間から、彼女を軽蔑しているのだろう。彩矢香は眉一つ動かさない。
だから、僕が相手をするしかなかった。
「どうしてそんなことを言ったんですか?」
「母親を放棄して、女になりたかった……バカよ、馬鹿なの! 後悔してもしきれない」
「そのあとすぐに、サチエさんは自殺を?」
「いいえ。娘は高校を辞めて、独りで東京に出たわ。死に場所を探しに」
ここまでは堪えていたが、とうとう大粒の涙を流す哀しき母親。
「死に場所?」
「……娘がどうやって死んだか御存知では?」
「いいえ。自殺としか聞いていません」
「そぅ……」
スッと立ち上がり、写真立てのひとつを抱きかかえるようにして戻ってきた。
そして、写真の中の娘を懐かしむように、
「サチは私に似ず、頭が良かったから……」
と、自殺の詳細を語る。
驚愕だった。いや、大貫ならあり得る。
開桜中学校創設史上、最高の頭脳と云われた彼女になら……。



