ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】




「どうぞ、入…」

ドアを大きく開け、そこで初めて彩矢香と目が合った母親。

「あなた⁈」

今度は、彼女が絶句していた。

「もしかして、宝泉彩矢香さん⁉」

「え、えぇ。どうして私の名前を?」

「…………」

ドアの支えを僕に託し、何も答えないまま奥の一室に消える。

「「お邪魔します」」

家の中は乱雑極まりなく、まともな生活を送れていないのが手に取るようにわかる。

だが、あるモノだけが綺麗なまま置かれていた。

それは写真立ての数々。しかし、被写体に目を疑う。

華奢でかわいらしい笑顔を見せる小さな女の子と、聡明に微笑むとても美しい女性。

僕が知っている大貫とはまるで違うし、今や母親は見る影もなく劣化している。

「あの娘はこっち」

左手の襖が開くと、奥にも和室があった。

そこら中にお酒の缶が散乱し、小さなテーブルにはカップラーメンの残骸ばかり。

異臭と、充満した煙草の臭いや線香の匂いが混ざって、激しく鼻を突き上げる。

「ゥ゛……」

「大丈夫?」

「ぅ、うん」

生粋のお嬢様には到底理解出来ない有り様だろう。

「ここよ」

参考書が山積みになった学習机。その真ん中に、白い覆いで包まれた大きな箱と大貫の遺影があった。

見上げた壁には、クリーニングのビニールに包まれたままのセーラー服が2つ掛かっている。

——……。

僕らは、母親の傍らで手を合わせた。

目を閉じて偲びながら、彼女はもうこの世にいないという事実を真摯に受け止める。

「お茶、淹れますね」