無謀なのは百も承知。
でも、これしか方法が無い。
彩矢香もそれを理解しているのか、ほどなくして腹を決めた。
「わかった。行く!」
ブーツに履き替え、バックを持ち、晴れ間が覗く空の下に降り立つ。
その表情と遠ざかる背中は凛々しくて、とても頼もしかった。
手持ち無沙汰になった僕は、山口に電話をかける。
美佐子が死んだことを知らせ、呪いはまだ終わっていないと告げたが、
『その時間は空の上だ!』
なんて、危機感がまるで皆無。
訊けば昨日、宝泉グループが所有するハリウッドの別荘を貸してあげる、と彩矢香から連絡が来たらしい。
そういえばたしかに、山口との電話の後、彼女は父親に電話をかけていた。
『だから大丈夫! タツミ、こんな言葉知ってる? 呪いは国境を越えない。ってね』
「…………」
もうセレブ気分で、腹が立つほど浮かれている。
こんなヤツ、心配するだけ損だ。
次は、ここのところ影が薄い康文。
山口とは打って変わり、こいつは腹が立つほど冷静だった。
『そっか……ミサコも』
僕は尋ねる。怖くないのか、と。
『怖いよ。だけど、大貫が俺らを殺したいほど恨んでるなら、仕方ないと思ってる。だから、死ぬことに怯えて生きるより、当たり前の1日を大事にしたいだけ』
「…………」
最近、アブない宗教にでも入信したのか。
もう少し話を聞けば、“神”というフレーズにめぐり会えそうだ。



