純清学園。

ここに美佐子がいるというのか。

僕は、身の毛がよだつのを覚悟し、畑山から送られてきた動画をもう一度再生する。

《『ィ゛……痛いよ゛……せん゛せぃ。たす、けて゛……た…』
 『彼女ヲ助ケタケレバ純清学園ニ来イ。アンタニハ何故ソノ場所ナノカ分カルダロ? 早クシナイト、湯之下美佐子ハ死ヌゾ』》

流行を戦慄化した、卍に曲がりくねる美佐子の手足。

音声を加工しているその主は、あの場所に突如現れた3人組の一人だろう。

動画の終了と共に、僕と彩矢香は車から降りた。

肌を刺すような凍てつく寒さ。などと悠長なことは言っていられない。

「ここから入ろう!」

「うん」

氷のように冷たい鉄の門を乗り越え、敷地内に飛びこむ。

すぐさま携帯のライトを照らし、不快な音を奏でる新雪の上を歩きだした。

募る不安と恐怖は、シャンシャンと降り積もる雪の厚さと冷感に似ていて、その調和が僕の奥歯をガタガタと揺らす。

一歩を踏みしめる度に交錯する白い息が、浮かんでは消え、消えては浮かぶ。

見えない。わからない。

地図も、目的地すら知らぬ捜索。

まるで遭難でもしたかのように、僕らは彷徨い歩いた。

「ねえ……アレ、何?」

それは、校舎の裏に回ったとき。

彩矢香が震える指を突きだして僕に知らせる。

「ぁ゛、アレって……まさか」

闇夜が黒くかたどった大きな樹木。

その真下に、人の手が作り上げたとしか思えない造形物があった。