でもね、恋なんて、簡単に壊れてしまうもの。

この鏡みたく。私のように。

「消えた……ぉ゛、終わった!」

随分と喜んでいる。これが破壊的なファンファーレだとも知らずに。

「早く逃げよう、彩矢香! コイツらから!」

私の手を取り、強い力で引っ張る。

だが、すぐさま振り払った。

まだ気づかずにヒーローを気取るなんて、とんちんかんの鑑だ。

「彩矢香? もしかして……オマエ」

ネタばらしなんてする気はない。懺悔の声を聞く気も。

何も知らないまま生き地獄へと行ってもらおう。それが、水嶋辰巳に対する罰だ。

「よーく聞いて。あなたたちにはこれから、新世界の住人になってもらう。我々は監視する側。きっと楽しいわよ? もちろん、出るためのチャンスも与えてあげるわ」

敬太は歯向かうことなく、静粛に受け止めていた。

伊達磨理子をこの世に甦らせた罪の意識がそうさせるのか。

その正義感を貫いてもらおう。次なるステージで。

「ウソだろ⁉ 我々って……お前らホントに仲間なのか⁈」

くどい。そろそろ、疑問符を取り除いてあげよう。

仲間に無言の命を送り、水嶋辰巳を羽交い絞めにした。

「離せ゛っ! お゛い゛ッ!」

ひとときの間感じてしまった、私たちの絆。

恋を完全に断ち切る儀式は、呪われし禁断のゲームにも精通している。

「彩……何を゛⁉」

彼の利き手の小指を口に含む。


あなたにも、サヨナラを言わなければ。


「ィ゛! ヤ、やめろッ……」


いや、ここは前を向いて歩くための分岐点。


だから……。



        ¬
       ア

       リ

       ガ

       ト

       ウ
      ∟



奥歯で、別れを噛みしめた。


——グジャバキバキバギッ!!



「ぐう゛ああ゛ああぁ゛――――ッッ!!」






       【結】