『3時3分』

ゲームの参加者以外はその姿を見ることはできない。

すなわち、カノジョのことは今宵で見納めになるだろう。

寂しい。私に生きる術を教えてくれたヒトだから。

とても感謝している。つらつらと流れる涙が証拠だ。

木に手をかざして念じる。我が“子”を……。


——ザザザザザザッ。


来てくれた。


——ズザザザザザザザザッ。


おいでになられた。


    ——ザザザザザザザザッ。


これからの日本をより良くするための神が。


——ズザザザザザザザザッ。


『っ、ぅう゛……』

『しっかりしろ゛ッ!』

サヨナラ、磨理子様。

そして、ようこそ。新世界の入口へ……。

『彩矢……香?』



『フンフフフッ……ハハハッハハッ』



     ——ズッ。


  ——ズザザザザザザザッ。


仲間の車が公園の脇につけ、現世の主役が降りてきた。

「The end!」

私はカノジョの前に鏡を置いて、前進を阻む。

「早く鏡を割…」
「Shut up!! これから感動のシーンがはじまるの。あなたはただの脇役、黙ってて。ね?」

こっちに向かってくる5人の中心にいるのは、囚われの身の大橋敬太。

「な゛⁉ お前ら⁈ ぁ、あんたは⁉」

復讐の騎士団と彼の参上に、水嶋辰巳は口をあんぐりと開けて呆然と佇む。

「フッ……ご存知の通り、彼が磨理子様にとっての主人公よ」

「磨理子さん……」

敬太は膝をついて、動けないカノジョの背中に触れる。

仲間は、その姿を異様な目で見ていた。

「すごい! あなたには見えるの⁉」

このふたりには、やはり特別な絆が存在する。

「美しいわ……現世と霊界の、決して叶わぬ恋」

——バリ゛ーーーーンッ゛!!

「ッ⁉」「磨……」