通夜を抜け出して迎えに行くと、彼はいつもよりキメていた。晴れの日なのは私のほうなのに。
テンション高めで何かゴタゴタ言っていたけど、あとの祭り。
我ながら、心の移り変わりは酷だなーと思い、彼に笑って見せた。
AM 2:42
はじまりの場所に着く。
いいや。本当の始まりはもっと前。
ここまで来るのに長い年月をかけたから、記憶が掘り起こされてしんみりとなる。
『大丈夫……きっと大丈夫!』
私もそう思う。
たくさんの誤算があって、その度に哀しい心と出くわしたけれど、ついにやっと復讐の終焉を迎える時がきた。
大丈夫。私は、宝泉彩矢香として生きていける。
『あ゛り゛がとう……たっちゃん』
この気持ちは嘘じゃない。
初めての恋だったから、最期の復讐に相応しい。
試してみよう。後悔が顔を覗かせるのか。
視線を合わせると、ゆっくり口唇が近づいてきた。
せめてものお礼に瞼を閉じる。これもフィナーレの演出。
そして——。
走馬灯がめくりめく。あの日、彼の横顔を描いていたあの時まで。
口唇が離れて暗転した瞬間、大貫幸恵の人生が止まる。
まだ希望があったあの教室の片隅で、私は彼女を殺した。
目を開ければそう、新しい人生を歩む私がいる。
AM 3:00
『行こう』