ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】




結局、母は退院するまでの1週間、一度も見舞いに来なかった。

反応次第では進学をやめようと決意して、あの紙を渡す。

『まだ決めてないんだ……どこがいいと思う?』

こんな親でも、養われていることに変わりはないから。

すると、

『あら、そうなの⁉ じゃ静岡の焼津に引っ越しましょ!』

半ば興奮気味に言う。

訊けば、今の恋人は漁師らしく、そこが地元。彼の近くに居たいという身勝手な理由だった。

だけどよくよく考えてみたら、私にとっても好都合。

『じゃ、静岡の高校を受けるよ。いい?』

『えぇ! でも、お金ないから公立にして』

その心配には及ばない。希望した私立の女子高は、特待生としての席を用意してくれた。

入試試験が免除され、面接に臨んだが、

『なぜキミのような子が我が校に?』

などと、まるで接待。

卒業式を待たぬまま、私たち親子はひっそりと静岡に転居する。

悪夢の日々がこれで終わった。そう思っていた。

しかし、現実は地獄の入口に立っただけ。

信じがたい秘密と粉々に砕かれた自尊心が、私を地獄の果てへと誘う。

そこで生まれた。出会ってしまったのだ。

【復讐】という信念に。伊達磨理子という存在に。

高校2年の冬。

私は死ぬことを選んだ。

もしも、これから死のうとしている人が居るならば聞いてほしい。

あなたは今、特別な権利を持っていると。

「死ぬ気でやる!」
「死に物狂いでがんばる!!」

なんて簡単に言うヤツがいる。

だけどそれは、一度でも自ら命を断とうとした者だけが持てる特権。

その瞬間のことを思い出したら、生きていくのに邪魔をするプライドや恥と過大評価の恐れなんて、とてもちっぽけに思えて乗り越えられるはず。

これが私の生き方。この言葉があなたの心で生き続けたなら、私は死んだことにはならない。

そう信じている。

では、さようなら——。





            【完】