卒業式で流した泪よりも、あの日の涙のほうが熱かった。
『さっちゃん……夏休みとか遊びに行ってもい゛い?』
東京への引っ越し当日。
『う゛ん、当たり前じゃん! 私も行くからね』
トラックのすぐ脇で、嗚咽が止まらないふたり。
『行くわよ、サチ』
『……はい゛』
この地に何も置いていくものがないのか、母はいつも通り気丈で、初めて冷たい人だと思った。
そうやって親を恨むぐらい、そらとの別れは悲哀の極み。
『今日はありがとう。もう行かなきゃ……』
『ぅ゛、うん』
『……じゃあ、バイ』
『バイバイじゃないよ! またね、でしょ?』
『そ゛うだね! またね、そら……」
ついに、お別れ。
トラックの助手席から身を乗り出し、手を振る私。
私の姿が見えなくなるまで、両手を上に翳し続けてくれたそら。
涙がいくつも風に流され、流星のように消える。
拭う手には、箒星のような滴がついた。
そう。空を見上げればいい。
涙は落ちないし、いつも彼女を感じていられるから……。
だがその日はあいにく、黒い雲が覆っていた。
まるで、私たちのこれからの関係を模倣するかのような暗雲が——。



