「あ゛―――あ!」
――パリィーーーンッ。
強く打ちつけ、飛び散る破片。
その瞬間。
「ッハ!」
俺も、
「く……」
祐一郎も、
《プツッぜひ、劇場に足を運んでください。以上、さくらのぞみでした。バイバーイ》
血を凍らせるような張りつめた空気も、エアコンの送風がかき消す。
「ぁ、あの女がい……いない!」
喜び勇む、ピンちゃんの声。
「……敬太、これって?」
続いた祐一郎の問いに、俺の口から安堵のため息と調和する言葉がついて出る。
「終わった……」
「ボ、ボク、助かったの!?」
「ピンちゃん……そうだよ、助かったんだ!」
午前3時6分。
こんなに早く、命を脅かす危機感と決別するのは初めてだった。
しかし、余韻にすら浸れない。
俺の中で、強い期待が生まれていた。
「ごめん! 先に帰る!」
「ぇ、敬太? どうしたんだよ!」
祐一郎の制止も無視し、俺は部屋を飛びだした。
……沙奈。
可能性は大いにある。
――キイィーッ!
タクシーを身体で止め、乗りこむ前に行き先を告げた。


