ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ2 【完】




ザッ――

「ッ゛!?」

     ザッ――

「ひぃ゛!」

ザッ――

「あぁあ゛!!」

小刻みに変わる首の角度から推測するに、磨理子さんは瞬間的に移動しているようだ。

そう、“まばたき”1つが致命的。

「助けて゛……祐一郎! 敬太くん!」

俺があらかじめ用意していたシナリオは、木っ端微塵に崩壊した。

……鏡だ!

声が出せないなら、

「ッ゛……」

身体が動かないなら。

あとは、鬼である彼の精神力に賭けるしかない。

すると。

「くっ゛!」

……バ、バカ!

孤立無援の焦燥からか、吸血鬼へ十字架を掲げるように腕を突っ立て、おそらく磨理子さんがいるだろう箇所に鏡を示す。

あろうことか、瞼までしかと閉じて。

助かるための方法を、あれだけ噛み砕いて教えたのがすべて無意味になった。

……まただ。

川本くん、由香里、小泉、佑美。

皆が脳裏によみがえり、深い絶望感に囚われる。

……嗚呼……きっと俺はまた、助けられない。

高電圧のジレンマが心を貫き、刹那的に押し寄せる切なさ。

だが……。

………。

……ん?

この感覚、まるで時が止まったようだ。

這いずる音が……。


…………。


……しない!!

「ハ!?」

彼は、テーブルを見あげて目を剥く。

「敬太くん! 女が、い゛る……ででも、動かない!」

……えっ!? まさか……。

ごく稀にある。興奮の絶頂に立って見つける発見が。

「ねえ!! いいんだよね? いいんだよね!?」

……そうなのか!

磨理子さん自体はいかなるときも、鏡を向けられただけで身動きが取れなくなるようだ。

……割れ!! 鏡を割るんだ!!!!

俺の思いが伝わったのか、彼は鏡をモニター台の角にめがけた。