ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ2 【完】




「見えない! お前には見えるか?!」

祐一郎の声に、一瞬だけ換気口を見た彼は、首を激しく振ってうなずいた。

「よし! 上にいるんだな? 換気口を見ろ! 捕まったら死ぬぞ!」

「ひ゛ぃ゛……」

祐一郎は彼の前髪を鷲掴みにして顔をあげさせた。

「目を開けろっ゛て!!」

強引ではあるが、彼のため。

俺も賛同する。

「信じて! 俺たちを!」

「ッ……」

ゆっくり瞼をあげる彼。

「ぎゃあぁーー!!」

とたんに、恐れおののいた。

「か、お゛……顔! 逆さのぉぉぉぉ女!!」

換気口を指さして、目を血走らせる。


ドスンッ――
          ズザザザザザザッッ――


――カッ、カララーーン。

テーブルの隅に置いていた未使用の灰皿が床に落ちた。

おそらく、磨理子さんはテーブルの上にいる。

「っ゛……」

見えざる恐怖は、過去のトラウマに引けを取らない。

「う゛わぁああっ!」

常軌を逸した奇声を発して暴れ、祐一郎の手を振りほどく。

「行くな゛!」

俺は逃げようとする彼の背中に腕を伸ばした。

次の瞬間。

「ぬ゛ぁ!」

……ぅ、動けない。

身体が硬直。助けようとする者に起こる金縛りだ。

「…………」

見るからに、祐一郎も。

「ひいぃ゛ぃい゛ぃ!!」

――ドタッ。

彼はドアノブに手をかけたが、膝が折れて転倒。

とっさに振り返り、後ろ向きで、部屋の隅に後ずさった。

「這、這、這ってくる!!」