《オススメアーティストを紹介するこのコーナー、本日のゲストはプツッ――》
「な゛、なんだ!? 消えたぞ」
……来る。
おそらくモニターの電源が落ちたのだろう。
動じるわけがない。この程度で。
次の瞬間。
――キイィーーーーーンッ。
あの耳鳴りとよく似たハウリングが、スピーカーを通して耳をつんざく。
「ひぃ゛やぁあ゛あー」
冷静に考えても、怖くて当然。
だって、ON、OFFどころか、俺らはマイクにすら触っていないのだから。
同時に、身体にのしかかるような重い空気のスイッチが入った。
「ぁあぁあぁあぁぁ」
今にも飛んで逃げだしそうな彼。
ここを耐え抜かなければ、待っているのは“死”。
「耐えろッ!!」
俺の一喝で、ピンちゃんは膝に爪を立てる。
「ぅ゛ぅ゛……」
ズッ──
ザザザザザザッッ――
過去のトラウマが、今また現れた。
「どこだ!?」
俺と祐一郎は天井を見あげる。音がした先を。
ザザザザザザッッ――
ザザザザッ――
ズザザザザザザッッ――
“ソレ”は、俺たちがいる真上から、遠ざかるように這っていた。
「いなくなれいなくなれいなくなれいなくなれ……」
鼓膜を指で塞ぎ、身体を丸めて震える彼。
――ガッ! ガンッ! ガガンッ!
「「な゛!?」」
突然、換気口の格子を激しく叩く音。
ほんの30センチ四方の四角い穴に、途方もない恐怖を感じた。
――ガンッ! カララッン。
すぐにそれは外れ、やわらかいソファの上を弾み、床に落ちる。
ポッカリ開いた闇の入口。
「「…………」」
呆然必至。
が、磨理子さんは姿を現さない。
俺と祐一郎、ふたりの前には……。


