ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ2 【完】




「心配しなくていい。教えてあげるよ、小指を失わずに終わらせる方法」

「……へ? い、い今なんて?」

俺は、子供でも解るように噛み砕いて説明をする。

「ってことは……ボク、助かるの!?」

「あぁ!」

ピンちゃんの顔に、見る見る気力がみなぎっていく。

だからといって、人間の本能から簡単に恐怖心は消えない。

「今から公園に行こう!」

「えっ!?」

“公園”という言葉の響きだけで、彼は震えあがる。

「……じゃあ、どこにする?」

祐一郎は、俺を頼るような視線を向けた。

「…………」

あえて、なにも答えない。

どこにいようと、磨理子さんは必ずやって来ると知っているから。

「あそこにしよう!」

すると、ピンちゃんがネオンが瞬く看板を指差す。

「カラオケ?」

「うん。金曜日できっと客も多いしさ、霊もビビッて現れないかもよ?」

「たしかにそれ、一理あるかも!」

余裕を感じるふたりの声色。

その雰囲気を壊さないために、俺は口を閉ざしたまま彼らについていった。

「ところでさー」

店の自動ドアが開いても動かない祐一郎。

「急になに!?」

「……ピンちゃん、鏡持ってんの?」

「ぁ、持ってない」

「おいおい、それじゃ意味ねぇじゃん!」

「テヘペロッ!」

「きみはマヌケの鑑だな! つって」

「「ハハハハッ――」」

先に鏡を買いに行こうと、方向転換するふたりの背中。

……小泉。

俺はふと、アイツのことを思い出した。

これから彼らはバカをやって、大人になったらその思い出を“若気の至り”のせいにして、腹を抱えて笑い合う、ハゲたオヤジになるのかもしれない。

「イ゛……ッ」

亡くした友のことを憂うたび、右手の小指と心がズキズキ痛む。

「敬太ぁー!」

「けいたくーん」

俺を呼ぶ祐一郎とピンちゃん。

「ごめん、ボーッとしてた!」

青春を謳歌できる場所は、どうやらここにもありそうだ。