「心配しなくていい。教えてあげるよ、小指を失わずに終わらせる方法」
「……へ? い、い今なんて?」
俺は、子供でも解るように噛み砕いて説明をする。
「ってことは……ボク、助かるの!?」
「あぁ!」
ピンちゃんの顔に、見る見る気力がみなぎっていく。
だからといって、人間の本能から簡単に恐怖心は消えない。
「今から公園に行こう!」
「えっ!?」
“公園”という言葉の響きだけで、彼は震えあがる。
「……じゃあ、どこにする?」
祐一郎は、俺を頼るような視線を向けた。
「…………」
あえて、なにも答えない。
どこにいようと、磨理子さんは必ずやって来ると知っているから。
「あそこにしよう!」
すると、ピンちゃんがネオンが瞬く看板を指差す。
「カラオケ?」
「うん。金曜日できっと客も多いしさ、霊もビビッて現れないかもよ?」
「たしかにそれ、一理あるかも!」
余裕を感じるふたりの声色。
その雰囲気を壊さないために、俺は口を閉ざしたまま彼らについていった。
「ところでさー」
店の自動ドアが開いても動かない祐一郎。
「急になに!?」
「……ピンちゃん、鏡持ってんの?」
「ぁ、持ってない」
「おいおい、それじゃ意味ねぇじゃん!」
「テヘペロッ!」
「きみはマヌケの鑑だな! つって」
「「ハハハハッ――」」
先に鏡を買いに行こうと、方向転換するふたりの背中。
……小泉。
俺はふと、アイツのことを思い出した。
これから彼らはバカをやって、大人になったらその思い出を“若気の至り”のせいにして、腹を抱えて笑い合う、ハゲたオヤジになるのかもしれない。
「イ゛……ッ」
亡くした友のことを憂うたび、右手の小指と心がズキズキ痛む。
「敬太ぁー!」
「けいたくーん」
俺を呼ぶ祐一郎とピンちゃん。
「ごめん、ボーッとしてた!」
青春を謳歌できる場所は、どうやらここにもありそうだ。


